木構造テラスは一日にして成らず

木質構造の設計情報を共有する会(木構造テラス)が発足して,早いもので4年目を迎える。発足にあたりなぜ参画したのかを質してみると,以前から懇意にしている方から時候の挨拶に伺いたいと打診を受けたので気楽に了解し,当日はその人以外にもう一人いた。突然発足したい会の説明を始めたのはよいが,自分の役割も決められており,逃げられない状況が形成されてしまった。しまったなと優柔不断さを嘆いていると,発足会議で突然監査の指名を受け,しまったなと思いながら了承してしまった。語りがうまいのではなく,騙りがうまいのだと気が付いたが,後の祭りであった。

そんな折,25年程前になるが,ある女性評論家がテレビの公開討論に出演していたとき,学生から発言内容や容貌について揶揄されたとき「老婆は一日にして成らず」と言って論破したことを思い出した。彼女は一つのテーマをとことん詰めて研究し,考察を重ねながら研鑽を積んできた。あなたには何かそこまで一生懸命に取り組んできたことはありますかと尋ねた。その学生は受験勉強をして希望の大学に入学しましたと返答し,会場の笑いを誘った。すかさず彼女はそれで終わりですかと尋ねると,その学生は沈黙してしまった。

1年目は,会が発足したばかりなので,全員の熱い熱気が木構造テラスに充満していた。2年目は,木構造設計に不慣れな構造設計者に理解を得るため,どのような情報を提供したらよいのかといろいろな可能性を模索した結果,木構造の構造ソフトの使い方の連続講座を実施し,参加者から好評を得た。3年目は,新たな試みとしてJOB NAVIを開設し,会員メーカーからの情報提供を受け,設計者が困っている物件の構造設計を受託するサービスに挑戦した。当初のプロモーションが情報提供者や設計者に上手く伝達できなかったため,足踏み状態が続いています。JOB NAVIの活動を活性化させるため,再度会員メーカーにご協力をお願いしたい。また,㈱建築技術がさぼりにさぼり各方面から顰蹙を買っている「木構造テラス流――中大規模木造設計のトレーニング」(仮題)をゴールデンウイーク後までに出版する予定です。

そして,4年目を迎える。新たな試みとして定期スクールで会員の方の作品発表会を,東京オリンピック・パラリンピック前に予定しています。各自持ち時間は1物件当たり15~20分程度でプレゼンを行い,その後有識者から講評をいただくスタイルで考えています。構造設計の解法は一つではなく,違う解法もありますので,活発な情報交換を通して木構造設計の深度をより深めていただきたい。ぜひ,発表会へのご参画をお願いいたします。
今後,「木構造テラスは一日にして成らず」をモットーに,継続的かつ有益な活動を実践し,木構造テラスの継続に努めていきたい。

木構造テラスの活動で取り上げてほしい企画などがありましたら,事務局の「○○○は一日にして成らず」までご一報いただければ幸甚です。

2020年2月15日
木構造テラス監事 橋戸幹彦